世界屈指の長寿国である日本。しかし、充実した人生を送るには長く生きるだけでなく、健やかな日々をいかに長く楽しめるかが大切です。そこで、「健康寿命」をのばし、介護を受けず自立して生活できる期間をより長くするための心得をご紹介します。
健康寿命の長いことが理想的な長寿社会
健康寿命とは、健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間のことです。内閣府の「令和元年度高齢社会白書」によると、平成28年の我が国の平均寿命は女性87.14歳、男性80.98歳。それに対し、健康寿命は女性74.79歳、男性72.14歳でした。平均寿命と健康寿命の差は、女性が12.35歳、男性が8.84歳。この差が大きいと、生活の質は低下し、医療費や介護費の増加など家計への影響も大きくなる恐れがあります。
健康寿命をのばすことにつながる生活習慣の改善
健康寿命をのばすのを妨げる要因として、どのようことが考えられるでしょうか。厚生労働省の「2019年国民生活基礎調査」によると、介護が必要となった主な原因は、認知症、脳血管疾患(脳卒中)、高齢による衰弱、骨折・転倒、関節疾患、心疾患(心臓病)など。ここに挙げた疾患は確かに高齢になるほどかかる可能性は高くなるでしょうし、転倒で手や足腰などを骨折してしまう事故も若い人より高齢者のほうが多いイメージがあります。もちろん加齢によりそうしたリスクが自然と高まるのは仕方ないとしても、たとえばストレス、寝不足、運動不足、偏った食事なども健康寿命を短くしてしまう要因になることが考えられます。逆に言えば、生活習慣を改善することで健康寿命をのばすことは可能かもしれません。
食生活を見直して適度な運動を習慣化
それでは、健康寿命をのばすための具体的な方法を挙げてみましょう。まずは食生活について。肉よりも野菜、魚が中心のメニューを意識的に増やし、主食・主菜・副菜をバランスよくとります。塩分を控えめにすることも重要です。次に適度な運動を習慣化すること。運動は体の新陳代謝を促進し、中性脂肪量や血糖値、尿酸値、高血圧などの改善、心肺機能の強化、足腰など筋力の鍛錬につながり、ストレス解消の効果も期待できます。年齢や体力にもよりますが、軽く汗をかく程度の有酸素運動を毎日1時間程度行うことが目安です。運動する時間帯を決めておけば、健全な生活リズムを手に入れることも可能です。適度な運動や規則正しい生活は、体内時計を整え、快眠にもいざないます。もちろん睡眠も十分にとり、体調の維持に努めることをおススメします。ただし、注意すべきことも。過度の運動は体のどこかに支障をきたし、特に関節の痛みや持病のある人は逆効果となる場合が考えられます。主治医や理学療法士に相談するか、軽めの運動から始めて無理がないか確認しながら徐々にステップアップしていきます。何より継続していくことが大切なので、長く続けようという気持ちになれる程度の運動を行うように心掛けましょう。
外出しなくてもわが家で楽に筋肉強化
「運動は大切」とわかってはいても、家で過ごすことの多い昨今、運動する機会を見つけるのは難しいかもしれません。腰痛などをお持ちの方はなおさらでしょう。そこで、住まいの中でも椅子を使って楽に足の筋力を強化する運動をご紹介します。まずは椅子に座り、片足ずつゆっくりと足を上げ、膝をのばしたまま5秒止めておろします。これで歩行や階段の上り下りに必要な太ももの前の筋肉が強化されます。次にスクワット。椅子の背もたれにつかまって立ち、両膝を同時にゆっくり約30度曲げます。そのままの体勢で5秒たったら、ゆっくり膝をのばして直立します。こちらはバランス感覚を高め、階段の上り下りを楽にする効果も期待できます。同じく椅子の背もたれにつかまって立ち、片方の膝を曲げて足をゆっくり後ろへ上げます。膝が直角になった状態で5秒止め、ゆっくりおろします。今度は膝をのばしたまま片足を横にゆっくり広げながら上げ、約30度まで上げたら5秒止めてゆっくりおろします。これらは太ももの後ろ側と外側の筋肉を強くしてくれます。それぞれ無理のない範囲で毎日数回トライしてみてください。もちろん筋肉を強化するだけでなく、転倒やつまづきのリスクが少ない住まいの環境づくりも大切です。段差や滑りやすい床、薄暗い場所がないかをチェックし、それらを改善することは健やかな暮らしを長く楽しむコツの一つです。たった一度の人生がずっと笑顔に満ちたものであり続けるように、ぜひ健康寿命をのばすことにチャレンジしてください。